パスワードとは?知識情報で本人を確かめる仕組みと弱点

パスワード、知っている秘密。寅次郎先生と記事の内容を表すイラスト。
確認日:2026年11月7日

多くのWebサービスでは、ログインのときにIDとパスワードを入力します。どちらも入力欄に打ち込むものですが、実は役割がまったく違うものです。

本記事では、本人を確かめる3つの要素のうち、知識情報にあたるパスワードの仕組みと弱点を解説します。

パスワードとは

パスワードは、本人だけが知っている文字列を入力させて、本人かどうかを確かめる方法です。多要素認証で紹介した3つの要素のうち、知識情報にあたります。

暗証番号(PIN)や秘密の質問の答えも、同じ知識情報の仲間です。どれも「知っていること」を示すだけなので、ほかの人に知られた時点で、その人も本人になりすませてしまいます。

IDとパスワードの違い

ログイン画面には、IDとパスワードの2つの入力欄が並んでいます。下の図に、それぞれの役割を示しました。

ログイン画面のIDは誰かを名乗るための識別に使い秘密ではなく、パスワードは本人だと確かめる認証に使う秘密であることを示す図

IDの役目は、「私は誰か」を名乗ることです。これを識別と呼びます。メールアドレスやユーザー名がIDになることが多く、ほかの人に知られても困らない値です。そのため、IDは知識情報にはあたりません。

パスワードは、名乗った人が本当にその本人かを確かめるためのものです。これを認証と呼びます。本人だけが知っている秘密なので、ほかの人に知られてはいけません。

サービスがパスワードを確かめる仕組み

サービスは、受け取ったパスワードが正しいかを、保存しておいた値と見比べて確かめます。図の左が利用者、右がサービスです。

利用者がパスワードを送ると、サービスはハッシュ関数で変換し、保存しておいたハッシュ値と同じかを比べてログインを許すことを示す図

きちんと作られたサービスでは、パスワードをそのまま保存していません。ハッシュ関数という計算でパスワードを別の値に変換し、その値だけを保存しています。ログインのときは、送られてきたパスワードを同じ計算で変換し、保存した値と同じかを比べる仕組みです。

ハッシュ関数で変換した値から、元のパスワードを計算で戻すことはできません。それでも、短いパスワードや、よく使われるパスワードなら、候補を片っ端から変換して見比べれば当てられてしまいます。サービスから保存した値が漏れたときに、短いパスワードほど危ないのはこのためです。

使い回すと何が起きるか

パスワードでいちばん被害が広がりやすいのは、同じパスワードを複数のサービスで使い回したときです。下の図に、1つのサービスから漏れたIDとパスワードの組が、ほかのサービスで試される流れを示しました。

サービスAから漏れたIDとパスワードの組を、攻撃者がサービスBとサービスCで試し、同じパスワードを使い回していると入られてしまうことを示す図

攻撃者は、漏れたIDとパスワードの組を、ほかのサービスのログイン画面でそのまま試します。多くの人は同じメールアドレスをIDに使うので、パスワードまで同じなら、そのサービスにも入られてしまうでしょう。

自分では防げないサービス側の漏えいでも、パスワードをサービスごとに変えておけば、被害はそのサービスだけで止まります。

長くしても防げないこと

パスワードを長くランダムにすれば、推測や総当たりで当てられる心配はほとんどなくなります。アメリカ政府機関向けの認証の基準(NIST)が、パスワードだけでログインさせる場合に求める長さは、15文字以上です。

ただし、長さで防げるのは「当てられること」に限られ、長くしても変わらない性質が2つ残ります。

1つ目は、毎回同じ値をサービスへ送ることです。偽サイトに入力したり、入力を記録するマルウェアに読み取られたりすれば、盗んだ人は同じ値でログインできてしまいます。

2つ目は、人が入力する値であることです。本物そっくりのサイトに入力するか、電話で聞かれて答えてしまうかは、人の注意に頼るしかありません。デジタル庁の本人確認のガイドラインも、パスワードはフィッシングに弱く、利用者の行動や判断に頼るため、サービス側での根本的な対策が難しいとしています。

この弱点を補うのが、パスワードとは別の種類の要素を組み合わせる多要素認証です。送る値そのものをなくしたパスキーなら、この2つの性質がありません。

製品での使われ方

長くランダムで、サービスごとに違うパスワードを人が覚えるのは無理があります。そこで使うのが、パスワードを作って保存し、ログインのときに入力してくれるパスワードマネージャーです。

このサイトでは、パスワードマネージャーの1つである1Passwordを例に、ログイン情報を保存する手順を紹介しています。

参考にした一次情報

NISTは、アメリカ政府の技術標準を作る研究機関です。

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