Claudeを仕事で使う前に確かめたい、データの扱い・著作権・社内の許可

アプリのバージョン:未確認(公式資料による確認) この記事は法律上の助言ではありません。契約や社内規程の判断は、法務担当や専門家に確認してください。
AIを仕事で使ってみたいと思っても、「入力した内容がAIの学習に使われるのでは」「社外のサービスに会社の情報を送ってよいのか」と、最初の一歩で止まる人は少なくありません。この記事では、Claudeを使い始める前によく出る心配を、データの扱い、著作権、取引先との契約、社内の許可の4つに分けて整理します。
個人で試す人だけでなく、会社での導入を検討している人が、社内で説明するときの材料にも使える内容です。料金と機能の違いは、Claudeのプランの違いと選び方で比べています。
「AIの学習に使われる」とはどういうことか
AIの学習とは、たくさんの文章をAIに読ませ、次にどんな言葉が続くかを予測する力を育てる作業です。入力した会話が学習に使われると、その会話は将来のモデルを作る材料の1つになります。
学習に使われたからといって、自分の会話が検索できるようになったり、他の人の画面にそのまま表示されたりするわけではありません。ただし、学習した内容の一部をモデルが覚えて、似た文章を出力する可能性はゼロではないと考えておきましょう。仕組みはLLMとはで説明しています。
Claudeの場合、個人向けのプラン(Free、Pro、Max、Ultra)と、仕事向けのプランやAPIで扱いが分かれるため、表で比べました。
| 使い方 | 学習への利用 | 保存の期間の目安 |
|---|---|---|
| 個人向けで、学習を許可した場合 | 使われる | 学習用の仕組みでは、個人と結び付けない形で最長5年 |
| 個人向けで、学習を許可しない場合 | 使われない | 30日 |
| 仕事向けのTeam・Enterprise、API | 初期設定では使われない | APIは30日以内に削除。Team・Enterpriseは製品内に残り、Enterpriseは保存期間を設定できる |
個人向けのプランで学習を許可するかどうかは、設定の「プライバシー」から選べます。許可していても、シークレットチャットは学習に使われません。削除した会話も、その後の学習には使われない扱いです。
注意したいのは、回答への評価(高評価・低評価のボタン)の扱いでしょう。評価を送ると、学習を許可していなくても、その会話全体が最長5年保存され、学習に使われることがあります。安全上の問題があるとして確認の対象になった会話も、設定にかかわらず学習に使われることがあり、自分では外せません。各社に共通する考え方は、AIに入力した内容はどう扱われる?にまとめました。
入力した内容がAnthropicに送られるということ
Claudeに入力した文章や添付したファイルは、手元のパソコンの中ではなく、Anthropic(アンソロピック)のサーバーで処理されます。この節では、データの行き先と、ほかのクラウドサービスとの違いを順に見ていきましょう。
データが届く先と保存される期間
入力した内容は、インターネットを通ってAnthropicのサーバーへ送られ、回答になって戻ってきます。下の図は、データの流れと、使い方ごとにサーバーへ残る期間をまとめたものです。
Anthropicの説明では、データは米国で保存され、処理は米国・欧州・アジア・オーストラリアの国で行われることもあるそうです。送った内容は図の期間だけ保存されるので、会社の情報を送るときは、どの国にどれだけの期間、誰が見られる形で残るのかをプランごとに確かめることになります。
送ること自体を避けたいなら、AIを使わないか、手元で動くAIを選ぶしかありません。ただ、これはAIに限った話ではなく、メールやファイル共有など、社外のサーバーを使うサービスはすべて同じです。
オフィスソフトを使うのと何が違うのか
多くの会社では、Google Workspaceのドキュメント、Microsoft 365のWordやExcelなど、クラウドで使うオフィスソフトで毎日の資料を作っています。これらも、会社の情報をGoogleやMicrosoftのサーバーへ送り、契約に沿って扱ってもらうサービスです。
Googleは、Workspaceのデータを顧客の許可なくAIの学習に使わないと説明しています。Microsoftの説明でも、Microsoft 365のCopilotに入力した内容や組織のデータは、基盤のAIモデルの学習に使われません。Anthropicも、仕事向けの製品に入力された内容を初期設定では学習に使わないと、規約に明記しました。3社とも、データの扱いを定めた契約(データ処理の補足条項)を用意している点は共通です。
| 確かめる点 | オフィスソフト(Google Workspace、Microsoft 365) | Claude(Team・Enterprise) |
|---|---|---|
| データを預ける先 | GoogleやMicrosoftのサーバー | Anthropicのサーバー |
| 入力した内容のAIの学習 | 顧客の許可なく使わない(Google)。基盤モデルの学習に使わない(Microsoft) | 初期設定では使わない |
| データの扱いを定めた契約 | あり(GoogleはCloud Data Processing Addendum、MicrosoftはData Protection Addendum) | あり(Data Processing Addendum) |
| 管理者による管理 | Googleは管理コンソール、MicrosoftはMicrosoft 365管理センターで管理 | シングルサインオンなど。監査ログはEnterprise |
つまり、「社外のサーバーに送るから危ない」という理由だけでClaudeを避けるなら、クラウドのオフィスソフトも同じ理由で使えなくなります。すでにGoogle WorkspaceやMicrosoft 365を使ってよいと判断した会社なら、Claudeも同じ物差しで評価できるでしょう。
大きく違ってくるのは、どのプランで使うかです。個人で契約したアカウントに会社の情報を入れるのは、個人のGmailで仕事のメールを送るのと同じで、会社の管理が届きません。仕事で使うなら、会社が契約したTeamやEnterpriseを使うのが基本になります。
著作権に気をつける
Anthropicの規約では、Claudeが出力した文章などの権利は、使った人や会社に移されます。それでも、出力をそのまま使ってよいとは限りません。著作権で気をつける点と、使う前に確かめることを表にまとめました。
| 気をつける点 | 起こりうること | 使う前に確かめること |
|---|---|---|
| 既存の作品に似ていないか | 似ていて、もとにしたと判断されれば、著作権の侵害になりうる | 既存の作品と似ていないかを検索などで調べる。特定の作家や作品に似せるよう頼まない |
| 自分の作品として守られるか | 人の創作の関わりが足りないと、著作物として守られない場合がある | 構成や表現を自分で考え、手を加えてから使う |
| 内容が正しいか | もっともらしい誤りが含まれることがある | 数字、固有名詞、引用元を人が確かめる |
文化庁の考え方では、AIが作ったものを使う場面での著作権の侵害は、人が作ったものと同じように、既存の作品と似ているか(類似性)、既存の作品をもとにしたか(依拠性)で判断されます。AIが作ったものでも、既存の作品とよく似ていれば、侵害と判断されかねません。文化庁の資料も、使う前に、既存の作品と似ていないかをインターネット検索などで確かめるよう勧めています。特定の作家の文章や、特定のキャラクターに似せるよう頼んだ場合は、とくに注意が必要です。
反対に、AIが作ったものは、使う人の創作の意図と創作への関わり方が十分でなければ、著作物として守られない場合があります。AIの出力をそのまま自社の文章やデザインとして使うと、他社にまねされても権利を主張できないかもしれません。
著作権のほかに気をつけたいのが、内容のまちがいです。AIは事実と異なることを、もっともらしく答えることがあります(ハルシネーション)。社外に出す文章は、数字、固有名詞、引用元を人が確かめ、自分の言葉で直してから使いましょう。
【メモ】
Anthropicの商用の規約には、有料の仕事向けの製品が出力したものについて、第三者から著作権などの侵害を訴えられたときに、Anthropicが対応する条項があります。利用者が出力を書き換えた場合や、侵害と知りながら使った場合などは対象外です。補償があるからといって、確認を省いてよいわけではありません。
取引先との契約と、本人の同意を確かめる
自分の会社がAIの利用を認めていても、取引先から預かった情報を入れてよいとは限りません。情報の種類ごとに、何を確かめ、誰に聞けばよいかを表にまとめました。
| 入れたい情報 | 確かめること | 相談する相手 |
|---|---|---|
| 取引先から預かった資料 | 秘密保持契約に、目的外の利用や第三者への開示を禁じる約束がないか | 取引先の担当者、自社の法務担当 |
| 顧客や社員の個人情報 | 利用目的の範囲内か。学習に使われないプランか | 自社の個人情報の担当、法務担当 |
| 自社の未発表の情報 | 社内の情報の区分で、入力してよい情報か | 上司、情報システム部門 |
秘密保持契約には、預かった情報を目的外に使わない、第三者に開示しないといった約束が書かれていることがよくあります。
AIのサービスに入力することがその約束に反しないかは、契約の書き方次第です。業界団体の日本ディープラーニング協会が公開する利用ガイドラインのひな形は、AIの提供会社への開示に当たり、秘密保持契約に反する可能性があるとして、こうした情報を入れない形をとっています。提供会社が入力を保存しないなら違反しないという見方もあり、判断は分かれているのが現状です。迷う場合は、取引先に確認するか、情報を入れない方法を選んでください。取引先の担当者に「生成AIを使ってよいか」「どの情報まで入れてよいか」を事前に聞いておくと、後から問題になりにくくなります。
顧客や社員の個人情報も同じです。個人情報保護委員会は、事業者が個人情報を含む内容をAIに入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう呼びかけました。入力した個人データが、回答を作る以外の目的(AIの学習など)に使われる場合は、本人の同意を得ないと法律に反するおそれがあるとも注意しています。学習に使われない仕事向けのプランを選ぶことは、この点でも意味がある選択です。
【メモ】
個人情報保護委員会のQ&Aには、クラウドの事業者が契約上データを取り扱わない場合は、個人データの「提供」に当たらないという考え方があります。ただし、生成AIへの入力がこれに当たるかどうかを、委員会ははっきり示していません。個人データを扱う業務で使うなら、法務担当と相談して決めてください。
会社で使ってよいかを確かめる
会社でClaudeを使うときは、「AIを使ってよいか」と「その情報を入れてよいか」を分けて確かめるのが基本です。許可を取る単位も、会社全体から1回ごとの入力まで、いくつかの段階に分かれています。
確かめる2つの問い
確かめる問いは2つあり、決める人も、確かめる回数も違います。
| 問い | 主に決める人 | 確かめる回数 | 例 |
|---|---|---|---|
| AIを使ってよいか | 会社、情報システム部門 | 導入時に一度。見直すときに改めて | 会社が契約したTeamなら使ってよい |
| その情報を入れてよいか | 使う本人。迷えば上司 | 入力のたびに | 公開済みの資料はよいが、取引先の資料は確認してから |
1つ目は、生成AIを業務に使ってよいか、使うならどのサービスとプランか、という問いです。会社として契約したサービスなら使ってよく、個人で契約したアカウントは使わない、という決まりを置く会社がよく見られます。
2つ目は、使ってよいサービスに、目の前の情報を入れてよいかという問いです。公開済みの資料なら問題がなくても、未発表の製品情報、取引先の資料、個人情報は別の扱いが必要になります。社内の情報を「公開」「社内限り」「秘密」のように分けている会社なら、その区分ごとに入力してよいかを決めておけば、毎回迷わずに済むでしょう。
許可を取る単位
許可は1回取れば終わりではなく、外側の大きな単位から、内側の細かい単位へと重なっています。
外側の3つ(会社の方針、サービスとプラン、部署と業務)は、情報システム部門や上司が一度決めれば、しばらく変わりません。案件・取引先と、入れる情報は、仕事のたびに自分で確かめる部分です。社内の規程で決まっていない場合は、上司や情報システム部門に、どの単位の許可が必要かを相談してください。
法人で導入するときの確認項目
会社として導入を検討する場合は、次の項目を比べると、社内の説明や稟議の資料を作りやすくなります。ほかのクラウドサービスを導入したときの確認項目と同じ形でまとめれば、判断の基準もそろうでしょう。
| 確かめる項目 | Claudeで確かめる点 |
|---|---|
| 契約の形 | 個人向けの規約ではなく、商用の規約が適用されるTeam・EnterpriseやAPIか |
| 学習への利用 | 初期設定で学習に使わないこと。評価ボタンの扱いも社内に周知する |
| 保存期間 | 会話を残す期間。Enterpriseは保存期間を設定できる |
| 管理機能 | シングルサインオン、メンバー管理、監査ログ(Enterprise)、利用状況の分析 |
| 第三者の認証 | SOC 2 Type II、ISO/IEC 27001、ISO/IEC 42001などの取得状況 |
| データ処理の契約 | Data Processing Addendumの内容。個人データを扱うなら、保存する国も確認する |
| 社内の決まり | 使ってよい業務、入れてよい情報の区分、出力を確かめる担当 |
| 利用者への教育 | 入れてはいけない情報、出力の確かめ方、困ったときの相談先 |
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AIを業務に使う事業者(AI利用者)に向けて、出力の精度とリスクを理解して使うことや、個人情報・機密情報を不適切に入力しないことを求めています。社内の決まりを作るときの参考になる資料です。
導入の最初は、社外秘の情報を扱わない業務から始め、使い方と決まりを少しずつ広げていけば、問題が起きたときの影響を小さくできます。
個人で使うときに今日からできること
個人のアカウントで試す場合も、次の3つを決めておきましょう。表の左から順に、すぐに確かめられます。
| やること | 具体的には |
|---|---|
| 学習に使うかを選ぶ | 設定の「プライバシー」で選ぶ。迷ったら許可しない設定にし、評価ボタンも押さない |
| 入れない情報を決める | パスワード、カード番号、マイナンバー、他人の個人情報など |
| 勤務先の情報を入れない | 仕事で使いたいときは、まず会社の決まりを確かめる |
とくに3つ目は、個人のアカウントでは会社の管理が届かないため、守っておきたい点です。
参考にした一次情報
- Anthropic「Plans & Pricing」
- Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(個人向け)
- Anthropic Privacy Center「How long do you store my data?」
- Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(仕事向け)
- Anthropic Privacy Center「How long do you store my organization’s data?」
- Anthropic Privacy Center「Where are your servers located?」
- Anthropic Privacy Center「What certifications has Anthropic obtained?」
- Anthropic「Consumer Terms of Service」:個人向けの利用規約
- Anthropic「Commercial Terms of Service」:仕事向けの利用規約
- Google「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」
- Microsoft「Data, Privacy, and Security for Microsoft 365 Copilot」
- Microsoft「Microsoft Products and Services Data Protection Addendum (DPA)」
- 文化庁「AIと著作権について」:「AIと著作権に関する考え方について」などの公開資料
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
- 総務省「AI事業者ガイドライン」:総務省と経済産業省がまとめた、AIを開発・提供・利用する事業者向けの指針
- 個人情報保護委員会「Q&A」Q7-53:クラウドサービスに個人データを預ける場合の考え方
- 日本ディープラーニング協会「生成AIの利用ガイドライン」:業界団体が公開する、社内ルールのひな形