個人情報先出しシステムとは?架空の個人情報を作るジョークツール

個人情報先出し、本物じゃない、ジョークツール。寅次郎先生と記事の内容を表すイラスト。
確認日:2026年10月19日
個人情報先出しシステム Ver.2.6
ページのソースを読んで仕組みを確認

2026年10月17日から18日にかけて、Xに氏名、住所、マイナンバー、カード番号を並べた投稿が次々に流れました。どの投稿にも「#個人情報先出しシステム」というハッシュタグが付いています。この記事で説明するのは、このツールが作られた背景と、本物そっくりの情報がどう作られているかです。仕組みは、解説記事に頼らず、ツールのページのソースを読んで確かめました。

個人情報先出しシステムとは

個人情報先出しシステムのアイコン

個人情報先出しシステムは、個人で開発をしているNoxelさん(@NoxelLab)が公開したジョークツールです。2026年10月17日の作者の投稿には「※ジョークツールです」と添えられていました。

画面は昔のパソコンのデスクトップを模しています。デスクトップには「顧客名簿_最新版.csv」や「反省文(案).txt」が置かれ、メニューには「謝罪会見(A)」があり、下の帯には「セキュリティ:なし」と出る作りです。照会中のログに流れるのは、「ダークウェブ相場を確認… 1 件あたり 12 円」「本人確認:省略しました」といった文でした。個人情報の漏えいで見聞きする言葉を、そのまま小道具にしています。

ページの右下の注記には、表示される情報はニックネームからローカルで作った架空のもので、実在の人物とは関係がないとの説明もありました。

話題になった背景

ツールが公開されたのは、企業からの個人情報の流出が続けて報じられていた時期でした。NHKは10月6日に、不正アクセスによる大量の漏えいが相次いでいると報じ、セキュリティー会社の分析として、7月以降に被害が増えたと伝えました。10月13日のFNNの記事は、9月以降だけで、可能性を含めて1億500万件以上の漏えいがあったとしています。同じ記事で元警察庁の専門家は、個人情報は流出を前提に対策を考えるべきだと述べていました。

「漏れるのを待つくらいなら、自分から先に出してしまおう」という発想は、この状況をそのまま裏返したものだと読めます。作者が動機をどう説明したかは、Xにログインしていない状態では読めませんでした。確認できた作者の投稿は、先に挙げた一文だけです。

広まり方には、ツールの作りが関係しています。照会票の下にある「X で先出しする」を押すと、次の形の投稿文が入ったXの投稿画面が開くからです。

個人情報が漏れる前に、自分から漏らして先手を打ちます。

氏名:(架空の氏名)(男性)
住所:(架空の住所)
マイナンバー:(伏せ字を含む12文字)
クレカ番号:(架空の番号)
有効期限:(月/年)

#個人情報先出しシステム
https://noxelwork.com/preleaker

利用者が「ポストする」を押せば、同じ形の投稿がハッシュタグとURL付きで流れます。見た人がリンクから試し、また投稿するという流れで、10月18日の未明には、トレンドに入った理由を尋ねる質問が質問サイトに投稿されていました。投稿の見た目が本物の漏えいに似ているため、「本物ではないか」と心配する声も出ています。

架空の情報はどう作られているか

ページのスクリプトを読むと、照会票の中身はすべてブラウザーの中で作られ、入力したニックネームを外へ送る処理は見つかりませんでした。外から読み込んでいるのは、文字の書体(Google Fonts)と、照会票を画像にするためのライブラリー(html2canvas)だけです。

ニックネームから、毎回同じ人物を作る

ニックネームは、前後の空白を除き、英字を小文字にそろえてから、ハッシュ関数で1つの数に変えられます。その数を種にして疑似乱数を作り、姓、名、住所、番号を順に選ぶ仕組みです。種が同じなら疑似乱数の並びも同じなので、同じニックネームからは、何度照会しても同じ人物ができます。

筆者はこの生成の部分を手元で再現し、ニックネーム「寅次郎」と男性を与えてみました。氏名、住所、マイナンバー、カード番号、有効期限、整理番号まで、ツールの画面と同じ結果です。

性別は種に含まれていません。性別で変わるのは名を選ぶ候補だけで、姓、住所、番号は男性でも女性でも同じになります。

本物になり得ない番号にする工夫

カード番号やマイナンバーの最後の1桁は「検査用数字」です。ほかの桁から決まった計算で求める数字で、入力の誤りを見つけるために使われています。このツールは、その検査用数字をわざと合わないようにしていました。

項目 作り方 実在の情報と重なるか
町名 「名簿」「流出」「漏洩」「炎上」などと、「町」「台」「ヶ丘」などを組み合わせる 重ならない作りになっている
カード番号 国際ブランドの番号の形で作り、検査用数字を正しい値から1〜9ずらす 実在し得ない番号になる
マイナンバー 11桁目を「*」で伏せ、そこに0〜9のどれを入れても検査用数字が合わない値を末尾に置く 実在し得ない番号になる
郵便番号 7桁の数字を無作為に選ぶ 実在の番号と一致することがある

マイナンバーの工夫は少し込み入っています。検査用数字は、各桁に決まった重みを掛けて足し、11で割った余りから求める決まりです。伏せた11桁目の重みは2で、そこに0〜10を入れたときの余りはすべて異なります。ツールは「10を入れたときだけ合う」検査用数字を選んでいるので、1桁の数字を入れる限り、どれを入れても合いません。

筆者は手元で2万人分を作り、確かめました。カード番号の検査を通ったものも、マイナンバーの伏せ字を埋めて検査用数字が合ったものも、1件もありませんでした。

町名の組み合わせは、実在しない住所にするためのものと読めます。ただし、郵便番号だけは検査用数字のない7桁の乱数です。照会票の画面と保存した画像に表示され、Xの投稿文には入りません。

使うときに気をつけること

架空の情報だと分かっていても、気をつけたい点があります。

  • ツールを知らない人には、投稿が本物の漏えいに見えます。投稿するなら、ジョークツールの結果だと分かる一言を添えてください
  • ニックネームの欄には、本名や、本名につながる名前を入れないでください。保存した画像には、照会キーとしてニックネームがそのまま写ります
  • この記事で確かめたのは、2026年10月19日時点のVer.2.6です。Webページは予告なく変わることがあります
  • 本物の個人情報を守るには、このツールとは別の対策がいります。パスワードを使い回さないこと、2段階認証やパスキーを使うこと、フィッシングの偽サイトに入力しないことが基本です

操作を始めるには

ツールの操作は、架空の照会票を作ってXに投稿する方法で、画面を追って説明しています。Xに投稿せず、照会票を画像で保存するだけでもかまいません。

参考にした一次情報

当サイトが作成した本文はCC BY 4.0です。引用画像は対象外です。個人情報先出しシステムの記事の一覧へもどる